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敷金返還の具体的事例

敷金返還の具体的事例~借主側が勝訴した場合


◆今回紹介する2つの判例の敷金返還請求については、いずれも借主側が勝訴したものです。

【事例1】
X:入居者
Y:不動産会社

 Xは、平成5年12月にYから木造建物を賃借し、敷金14万2千円をYに預託した。
Xは、平成8年8月16日に、本件建物の賃貸借契約か終了したため、本件建物をYに明け渡した。
この際Yは、Xに対してリフォーム代金として12万2320円を請求し、敷金との差額1万9688円を返金する旨を通知した。
なお、明け渡しの際の建物の状況は後述の[理由」の項て紹介する事実を除いて、具体的には明らかではない。

 Xは、敷金全額の支払い命令を申し立て、裁判所は、その旨の支払い命令を発したが、Yが異議を申し立てたため、通常の裁判手続きが始まった。
Yは、この異議申し立ての際、修繕の費用のうち、任意に5万円を負担する旨の申し出をし、結局、6万9688円(1万9688円に5万円を加算した額)の返金に応した。
本件はそれを不服としてXが敷金の全額返金(敷金の残額7万2312円)を求めた。

 Yが最初にリフォーム代金として請求した12万2312円の内訳は、次のとおり。

●ルームクリーニング費用の3万円
●ガスコンロ内部クリーニング費用の4000円
●畳表替え費用の2万2500円
●クロス張り替え費用の5万4750円
●クロスクリーニング費用の7500円
●消費税3562円

【事例2】
X:入居者
Y:建物所有者

 Xは、Yから建物を賃借したが、その際の特約において、建物の破損、汚損または付帯設備の修繕費などは借り主(X)の負担であり、専門業者またはこれに類する者による室内全般にわたる清掃クリーニングをXの負担においてすることが約された。
入居は平成5年8月であり、預託した敷金は31万円である。

 Xは、平成7年8月に借家契約か終了した際にYに対し敷金の返還を求めたが、Yはこの特約を理由に、3万円余りの返還に応じたのみであった。
そこでXがYに対し敷金全額の返還を請求した。


【 勝訴の理由 】
【1】Xは、配偶者とともに本件建物に3年弱の間居住したが、「2人ともたばこは吸わず、夫婦共稼ぎの生活を送っていたこと、本件建物を退去するまで賃料はもとより公共料金の未払いはー切なく、本件建物を退去する際は、普通に掃除をして出たこと、ガスコンロはXのものであったが、入居予定者の希望により残したものであること、Xが本件建物の通常な使用収益を超えた方法により発生させた毀損個所を認めることはできないこと…」これらの事実を認定できる。
したがって、本件建物は共稼ぎ夫婦によって社会通念上通常の方法により使用されたものと認められ、自然ないしは通例的に生ずる損耗以上に悪化していることを認めるに足りる証拠はない。
以上の事実によると、Yの主張する修繕費を原告に負担させる合理的な根拠はなく、敷金全額をXに返還すべきである。
【2】建物は時の経過によって減価していくのは避けられず、賃貸人は、これに対応じて賃料収入を得るものである。
建物を賃貸開始時の状態、すなわち時の経過がなかったような状態に復帰させることを要求することは、当事者の公平を失するというべきである。

したがって、本件特約は、社会通念上、時の経過およひ建物の通常の使用によって生ずる自然の損耗についてまで、それがなかった状態に回復すべきことを要求しているものではなく、賃借人の故意・過失に基づく建物の毀損や、通常でない使用方法による劣化などについてのみ、その回復を義務づけたものと解するのが相当である。


【 解説 】
敷金は、賃貸借契約に基づいて生じた借り主の債務を担保するため、借り主が貸主に預託する金銭である。

 賃貸借契約に基づいて生ずる借り主の債務としては、例えば賃料債務や借り主の落ち度による賃借物件の汚損などに伴う損害を賠償する債務が考えられる。
これらの債務が退去時に残っていれば、債務額を控除した金額が借り主に返される(債務額が敷金の額を超える場合には、敷金は返ってこないし、借り主は、不足額を払わなければならない)。
これに対し、借り主の債務が何ら残っていない場合には、貸主は敷金の全額を返還しなければならない。

 一般に賃借物件の修繕は、借り主の落ち度による汚損・破損の場合を除いては、貸主の義務であり、したがって、その費用も貸主が負担する。
これは民法六〇六条で定められている原則であり、この原則と異なる特約をすることは可能であるが、裁判所は、その特約をそのまま有効とは認めないことも少なくない。
もし、修繕が貸主の負担であるということになる場合には、たとえ退去時に借り主か修繕をしていないとしても、貸主は、敷金の全額を返さなければならない。

 具体的には、次のような場面が考えられる。

A 特約がないため原則どおり修繕は貸主負担となる場合
B 特約があり、それが有効であると考えられるため、修繕は借り主の負担となる場合
C 特約が不動文字で印刷されていて、借り主に十分に説明されないまま契約書に入れられたものであり、したがって特約は無効であると考えられる場合(例文解釈)
D 修繕を借り主負担とする特約があるが、そこにいう修繕とは通常の自然損耗を超えた汚損などに限られると考えられる場合(信義則に基づく特約文言の制限解釈民法一条二項)
E 修繕を借り主負担とする特約が著しく不公正なものであるため、無効であると考えるべき場合(公序良俗違反民法九〇条)などがある。

【1】の事件は、「A」に当たる事例であり、裁判所が敷金全額の返還を命したのは当然であると考えられる。

 なお、判決理由で挙げる諸事実の中で、中心的な意味を持つのは「Xが本件建物の通常な使用収益を超えた方法により発生させた毀損箇所を認めることはできないこと」であり、「Xは、配偶者とともに本件建物に3年弱の間居住したが、二人ともたばこは吸わず、夫婦共稼ぎの生活を送っていたこと」「本件建物を退去するまで賃料はもとより公共料金の未払いは一切なく、本件建物を退去する際は、普通に掃除をして出たこと」「ガスコンロはXのものであったが、入居予定者の希望により残したものであること」までは、「Xが本件建物の通常な使用収益を超えた方法により発生させた毀損箇所を認めることはできないこと」を補強する事実であるというべきである。
例えば、子供のいる借り主が、この種の紛争で直ちに不利に扱われる結果は適当でないと考えられる。

【2】の事件は、「D」に当たる事例であり、裁判所が敷金全額の返還を命じたのは正当であると考えられる。

 退去時の修繕ないし清算をめぐる紛争は、近時、増えてもいるが、これを解決するに当たっては、修繕を借り主負担とする特約の有無(それにより、「A」と「B」「C」「D」のいずれで解決するかが分かれる)に応じ、問題処理を考えることが何よりも大切である。
また、特約がある場合には、その文言を具体的に確かめることが、「B」「C」「D」のいずれによることができるかを見通すに当たり重要な意味を持つ。

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